【架空事例】28歳でSIerから自社開発へ
架空インタビューについて
この記事は、キャリアの選択を考えるために、仮定した人物・条件で構成した架空のインタビューです。実際の取材ではありません。人物の発言、年収、勤務時間、転職後の経過はすべて説明用の設定であり、職種の相場や転職成果を示すものではありません。
業務内容は、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の解説と照らして確認しました。参照した統計と、この記事で仮定した条件の違いは末尾に記載しています。人物・発言・個別の年収や残業時間は説明用の設定で、業界平均から算出したものではありません。
「もっとコードを書きたい」と、年収480万円のSIerから想定540万円の自社開発企業へ。開発時間は増えたものの、入社直後はレビューで手が止まった28歳の架空ケースです。
今回の人物と、転職前後の条件
Bさん、28歳。中堅SIerで6年間、業務システムの保守・改修を担当。一人暮らし。転職先は法人向けサービスを開発する会社で、8人の開発チームに参加します。入社8カ月時点の対話です。
| 項目 | 転職前 | 転職後 |
|---|---|---|
| 年収 | 480万円:月給30万円×12+残業代40万円+賞与80万円 | 想定540万円:月給38万円×12+残業代24万円+賞与60万円 |
| 担当 | 保守・改修、設計書修正、外注先との調整 | 新機能の実装、レビュー、リリース後の改善 |
| 残業の設定 | 月20時間程度 | 通常月10時間、リリース月は25時間程度 |
| 勤務 | 週3日出社、週2日在宅 | 原則在宅、月2回出社 |
| 開発・運用 | 外注先との分担。担当範囲が比較的固定 | 8人で開発。週交代の障害一次対応あり |
年収は本人の額面額。転職前は直近1年間、転職後は設定した月給・残業代・賞与を年換算した想定額です。転職後の年間受取実績ではなく、賞与や残業時間で変わります。以下の対話もすべて架空です。
会社を辞めたいより、開発の経験を増やしたかった
Q. SIerでの仕事に、どんな不満がありましたか?
Bさん(架空):一番つらかったのは、仕事ができないわけではないのに、自分に何ができるのか説明しづらかったことです。問い合わせを整理して、設計書を修正して、外注先に確認する。その仕事も必要ですが、自分で実装する時間は少なくなっていました。
転職の求人を見ると、触ったことのない技術名が並んでいました。この先も同じ仕事を続けたら、経験年数だけが増えるのではないかと不安になったんです。エンジニアを辞めたいわけではなく、むしろ続けるために開発経験が欲しかった。
Q. なぜ自社開発を選んだのですか?
Bさん(架空):作って終わりではなく、使われた後まで見たかったからです。前職では、要望の背景を直接聞けないこともありました。自社のサービスなら、反応を見ながら直せるのではないかと思いました。
ただ、最初は「自社開発なら新しい技術を使えて、自由に作れる」と、かなり大ざっぱに考えていました。選考で実際の仕事を聞いて、既存機能の保守や顧客ごとの要望調整も多いと分かりました。それでも、その判断に自分も参加できる点に惹かれました。
入社して最初に困ったのは、コードの量ではなく進め方
Q. 入社直後は、すぐに開発できましたか?
Bさん(架空):最初の小さな画面改修で、思った以上に時間がかかりました。動くものは作れたのですが、テストの書き方や既存の設計に合っていない、とレビューで戻ってきたんです。
前職なら先に設計書を固めて、合意した通りに実装することが多かった。新しいチームでは、小さく作って見せながら進める。正解の仕様書を待っていても進まないことに、最初は戸惑いました。
夜に勉強すれば追いつくと思っていたのですが、何を優先するか分からないまま手を広げても疲れるだけでした。上司との面談で、最初の一カ月は一つの機能の流れを理解する、と範囲を絞ってもらいました。
Q. どうやって質問できるようになりましたか?
Bさん(架空):在宅だと、忙しそうな人に連絡するのをためらいました。半日考えてから質問したら、もっと早く見せてと言われました。でも「いつでも聞いて」は、入社したばかりだと意外と難しいです。
そこで、どこまで試して何が分からないかを短く書いて、毎日夕方の15分で相談することにしました。緊急のものは別ですが、聞ける時間が決まったことで、抱え込む時間は減りました。
その枠がなかったら、在宅勤務は自分に合わないと思っていたかもしれません。働く場所だけでなく、入社した人が質問できる仕組みがあるかが大きかったです。
増えた実装時間と、引き受けるようになった運用
Q. 希望していた仕事は増えましたか?
Bさん(架空):増えました。利用者から入力が分かりにくいと言われた画面を直し、問い合わせがどう変わったかを見る。そういう一連の仕事ができたのはうれしかったです。
ただ、新しい機能だけを作るわけではありません。既存データの確認や古い処理の修正もあります。以前なら退屈だと思ったかもしれませんが、誰が困っているかが分かると、同じ改修でも受け止め方が違いました。
前職の調整経験も役立っています。曖昧な要望に対して、今必要なことと後でよいことを整理する場面では、実装の速い人とは別の役割を持てました。過去の6年間が無駄だったわけではない、とそこで少し安心しました。
Q. 自社開発ならではの負担もありますか?
Bさん(架空):サービスを止めない責任が近くなりました。チームでは障害の一次対応を週交代で担当します。最初の担当週は、夜に通知が来るかもしれないと思って、落ち着かなかったです。
転職前にも運用があるとは聞いていましたが、通常の残業時間ばかり見ていました。通知が来なかった週でも、気にしている時間はある。平均の残業が少ないからといって、全部の夜が自由とは限らないんですね。
今は経験者と組む期間を設けてもらっています。担当の頻度や、困ったときの連絡先、休日の扱いまで聞いてから入れば、心構えが違ったと思います。
コードを書く時間は増えました。その分、作ったものが動き続けるところまで、自分の仕事になりました。
年収は増えたが、選ぶ基準は給与だけではなかった
Q. 480万円から540万円という変化は大きかったですか?
Bさん(架空):ありがたいですが、実際には月給・賞与・残業代を分けて見ています。540万円は賞与と残業代を含めた想定なので、いつもその金額になるとは考えていません。
選考中には、もう少し年収が高い会社も検討しました。でも、最初から一人で広い範囲を担当する話だったんです。今の自分は、報酬より先にレビューを受けて実装経験を積みたい。そこがはっきりしたので、比較しやすくなりました。
Q. 8カ月たった今、転職して良かったと思いますか?
Bさん(架空):開発経験を増やしたいという目的には、合っていたと思います。ただ、入社直後から活躍できたわけではありません。レビューで直しが続いたときは、前の会社ならもっと役に立てたのにと考えました。
今も分からないことはあります。でも、前より具体的に何を覚えればよいかが分かるようになった。その違いは大きいです。もし誰にも聞けず、納期だけ求められるチームだったら、同じ転職先の種類でも評価は違っていたと思います。
「自社開発」の先にある、チームの条件を見る
Bさんのケースで結果を分けた設定は、自社開発という分類だけではありません。実装を任せる機会と、レビューや質問の時間が両方あったことです。担当する業務と支援が釣り合っているかが、この記事で比べたい点です。
面談では、直近に入社した人が最初の一カ月で何を担当したか、誰がレビューするか、予定どおり進まないときにどう調整するかを聞くと、入社後の姿が見えやすくなります。「教育制度があります」だけで、日常の相談先まで分かったとはしないことが大切です。
運用については、当番の頻度、夜間・休日の連絡、手当や代休の扱いを確認します。説明できる範囲と、まだ決まっていない範囲を分けて聞けば、通常の勤務時間だけでは拾えない負担も比較できます。
実装経験を増やす方法は、自社開発への転職に限りません。現職の担当変更や、開発を任せてもらえる別のSIerも比較対象になります。「もっと書きたい」を、誰と何を作り、どんな支援を受けたいかまで具体化すると、候補の見え方が変わります。
参考資料と設定の考え方
資料確認日:2026年10月16日。以下は公開資料との照合で確認した範囲です。物語の人物や出来事が実在することを示す資料ではありません。
厚生労働省 job tag「システムエンジニア(Webサービス開発)」
設計・開発だけでなく、公開後の問題解決や保守も含むという仕事内容を参照しました。全国の年収578.5万円、平均年齢37.1歳は令和7年賃金構造基本統計調査を加工した職業分類の値です。28歳・自社開発企業の中途入社者に限定した統計ではありません。掲載の労働時間159時間を残業時間として扱っていません。
job tagの統計は、必ずしもページに書かれた職業だけの集計ではありません。年齢、企業規模、職位、勤務地などの条件も記事の人物とは一致しません。平均との差だけで、記事の給与設定が妥当だとは判定していません。
記事内の残業時間、在宅勤務の頻度、配属、給与内訳、転職後の評価は個別の仮定です。各ケースに一致する平均残業時間は確認できていないため、平均値としては紹介していません。口コミは個人の経験や集計対象の傾向を知る補助資料であり、すべての職場に当てはまる事実や、このケースの実績として扱いません。
