【架空事例】35歳で大手からベンチャーへ
架空インタビューについて
この記事は、キャリアの選択を考えるために、仮定した人物・条件で構成した架空のインタビューです。実際の取材ではありません。人物の発言、年収、勤務時間、転職後の経過はすべて説明用の設定であり、職種の相場や転職成果を示すものではありません。
業務内容は、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の解説と照らして確認しました。参照した統計と、この記事で仮定した条件の違いは末尾に記載しています。人物・発言・個別の年収や残業時間は説明用の設定で、業界平均から算出したものではありません。
年収780万円の大手メーカーから、想定760万円のベンチャーへ。裁量を求めて移った35歳が、家族との時間や福利厚生も含めて、入社半年後の選択を振り返る架空インタビューです。
今回の人物と、転職前後の条件
Dさん、35歳。大手メーカーの事業企画に13年勤務。配偶者と4歳の子どもがいて、住宅ローンがあります。転職先は従業員60人の法人向けサービス企業。事業企画担当として入社し、半年が経過した設定です。
| 項目 | 転職前 | 転職後 |
|---|---|---|
| 年収 | 780万円:月給45万円×12+残業代40万円+賞与200万円 | 想定760万円:月給55万円×12+残業代40万円+賞与60万円 |
| 福利厚生 | 年収とは別に会社負担の住宅補助が月3万円 | 住宅補助なし。ストックオプションは比較額に含めない |
| 主な仕事 | 部門間の調整、稟議資料、予算管理 | 顧客ヒアリング、企画、営業との調整、運用づくり |
| 残業の設定 | 月20時間程度 | 通常月35時間。サービス開始前は月50時間 |
| 家族との時間 | 週2回の迎えを予定しやすい | 迎えの日は在宅勤務。夜に作業を再開する日もある |
年収は本人の額面額。転職前は直近1年間、転職後は設定した月給・残業代・賞与を年換算した想定額です。転職後の年間受取実績ではなく、賞与や残業時間で変わります。以下の対話もすべて架空です。
今の会社でも働ける。でも、何を身につけたかが見えなかった
Q. 大手を離れようと思った理由は何ですか?
Dさん(架空):仕事に慣れていて、評価も悪くありませんでした。ただ、提案を出してから決まるまでに時間がかかるんです。自分が作った企画なのに、いつの間にか関係部署の意見をまとめることが中心になっていました。
決めた後の結果まで見たい、と思いました。周りが悪いというより、自分は調整の経験ばかり増えていて、この先も同じ仕事でよいのかなと。そんなときに、少人数で事業を動かす求人を見ました。
Q. 家族には、どう話しましたか?
Dさん(架空):最初は「もっと裁量のある仕事がしたい」と話しました。でも、配偶者にとっては、それで生活がどう変わるかのほうが大事でした。保育園の迎えは続けられるのか、住宅ローンは大丈夫か、忙しくなったら誰が対応するのか。
自分は仕事内容の話ばかりしていたので、少しずれていました。給与の条件と一緒に、出社日や迎えの担当を紙に書いてから、ようやく具体的に話せるようになりました。
額面の差は20万円。でも、比較する条件はそれだけではなかった
Q. 780万円から760万円への変化は、許容できたのですか?
Dさん(架空):当初は20万円の差ならと思いました。ただ、前職には年収と別の住宅補助が月3万円ありました。会社負担がなくなる部分まで並べると、額面の差だけでは足りません。
住宅補助の年36万円と年収の差20万円を単純に並べれば、年56万円分の違いになります。ただ、給与と補助では税や受け取り方も異なるので、手取りがそのまま56万円減るという計算ではありません。ここは家計の実際の支出で見直しました。
転職先の760万円も、賞与と残業代を含む想定です。月給は増えますが、賞与の比率は前職と違います。年収の見出しだけでなく、どこが確定していて、どこが変わるかを確認しました。
Q. 将来の報酬への期待もありましたか?
Dさん(架空):会社が成長したら、という話には惹かれました。でも、将来の報酬を住宅費の支払いに当てるわけにはいきません。ストックオプションのような将来の価値が未確定なものは、今回は生活の収入として数えないと決めました。
そのうえで今の条件を選べるか、です。夢のある話が嫌なのではなく、期待と毎月払うお金を同じ欄に入れると、自分でも判断が分からなくなってしまうと思いました。
決まるのは早い。実行する人が十分とは限らない
Q. 希望していた裁量は増えましたか?
Dさん(架空):顧客に話を聞いて、提案をまとめて、経営者とその週に相談できる。決まるまでの距離は短くなりました。自分が出した案を試せるのは面白いです。
一方、決まったから誰かが実行してくれるわけではありません。サービスの案内資料も、営業への説明も、問い合わせが来たときの手順も必要でした。企画だけを考える時間が増えると思っていたら、実際は自分で整えるものが増えました。
Q. 「裁量がある」と「任されすぎる」の境目はどこでしたか?
Dさん(架空):予算や人を動かせるかどうかです。ある企画で顧客への提案を急ぐことになったのですが、開発担当は別の仕事で埋まっていました。自分に企画の責任はあっても、開発の優先順位を決められるわけではなかった。
そこで、誰の判断が必要なのか、どこまでなら今の人数で進められるかを、改めて話しました。前職の調整経験が役立った場面でもあります。ただ、会社が小さければ自然に話が通る、という期待は外れました。
決める人との距離は近くなりました。でも、人と予算が足りない問題まで、決定の速さで消えるわけではありませんでした。
家族との時間は、在宅勤務だけでは守れなかった
Q. 保育園の迎えは続けられていますか?
Dさん(架空):週2回は続けています。迎えの日は在宅にできるので、その点は助かっています。ただ、夕方に作業を切り上げた分を、子どもが寝てから再開する日がありました。
最初は、迎えに行けているから両立できていると思っていました。でも、夜に一息つく時間がなくなって、家族にも余裕のない返事をしてしまう。場所の自由と、仕事量の余裕は別だと感じました。
Q. 会社には調整を相談しましたか?
Dさん(架空):相談しました。最初は自分で引き受けたのだからと抱えましたが、続けられないと思って。今やる企画と後に回す企画を上司と決め、迎えの日の夕方は会議を入れないようにしています。
それでも、急な顧客対応がなくなるわけではありません。人を増やせるかも含め、まだ調整中です。転職前に、同じような家庭の事情がある人がどう働いているかを聞いていれば、制度の有無より具体的に考えられたと思います。
半年で「成功」と言い切れない理由
Q. 今の時点で、転職をどう評価していますか?
Dさん(架空):自分の案を試して、反応を見られる仕事は増えました。それは良かったです。ただ、そのために使う時間と、家族側に増えた負担がまだ釣り合っているとは言い切れません。
あと半年続けて、優先順位の調整で仕事量が落ち着くかを見たいです。ずっと夜に取り戻さないと回らないなら、仕事内容が面白くても働き方を再検討します。入社したのだから良かったことにしよう、とはしたくありません。
Q. もう一度選ぶなら、何を確認しますか?
Dさん(架空):事業の将来像だけでなく、今の人員で誰が何をしているかです。自分が入ったら何を引き継ぎ、どの仕事はやらなくてよいのか。入社後に期待される成果と、使える予算や協力者をセットで聞きます。
前職にも戻れない不満はありましたが、恵まれていた条件もありました。それを認めても、転職の判断が全部間違いになるわけではない。比較するときには、今の会社の良いところもちゃんと残しておけばよかったです。
このケースで比較したいのは、企業規模より仕事の条件
Dさんのケースは、仕事を動かす範囲は広がる一方、支援や福利厚生は減る設定です。ベンチャー一般の特徴を証明する話ではなく、本人が期待した裁量と、そのために引き受ける仕事量を比べるための例です。
確認したいのは、決裁の権限、使える予算、協力者、入社後に担当する業務、優先順位を下げられる仕事です。求人の「事業責任者候補」だけでは、どの権限がいつ渡されるのかまでは分かりません。
家計の比較では、給与の内訳に加え、住宅補助や通勤費など生活に関係する条件を分けて並べます。架空の金額を自分の基準にせず、自分の契約条件と必要な支出で確認するための観点として使ってください。
この人が考え直す条件は、忙しさが一時的か、常態化するかです。「成長できるから頑張れる」で終わらせず、どんな働き方なら続けられるのかを決めておくと、入社後の状況も同じ基準で見直せます。
参考資料と設定の考え方
資料確認日:2026年10月16日。以下は公開資料との照合で確認した範囲です。物語の人物や出来事が実在することを示す資料ではありません。
厚生労働省 job tag「企画・調査担当」
企画立案や商品・サービス開発、市場調査などの業務説明を参照しました。全国の年収736.8万円、平均年齢43歳は令和7年賃金構造基本統計調査を加工した職業分類の値です。大手からベンチャーへ移った35歳の年収比較ではありません。記事の780万円・760万円や住宅補助の有無は、比較のために置いた独立した設定です。
job tagの統計は、必ずしもページに書かれた職業だけの集計ではありません。年齢、企業規模、職位、勤務地などの条件も記事の人物とは一致しません。平均との差だけで、記事の給与設定が妥当だとは判定していません。
記事内の残業時間、在宅勤務の頻度、配属、給与内訳、転職後の評価は個別の仮定です。各ケースに一致する平均残業時間は確認できていないため、平均値としては紹介していません。口コミは個人の経験や集計対象の傾向を知る補助資料であり、すべての職場に当てはまる事実や、このケースの実績として扱いません。
